展覧会「200年をたがやす」|CULTIVATING SUCCESSIVE WISDOMS

秋田の伝統的工芸品にまつわるエピソードをお聞かせください

わたしがまだ子どもだった頃、1980年代あたりまででしょうか。かつて、地元の人たちが地元の工芸品を贈り合う文化がありました。わたしの実家にも、たくさんの秋田の伝統的工芸品があり、現役で使われているモノも少なくありません。その一方、戦後の高度経済成長期を経て、時代は大量生産大量消費社会へと急速に変化していきます。より強く壊れにくい、いつまでも新品のように変わらない、色や形が時流を捉えたより安価なモノなど、人々が求める「モノ」も大きく変化していきました。

 そうした時代の変化によって、ここ秋田に限らず、全国の伝統的工芸品の多くは、需要の減少、職人の担い手不足、それらにともなう原材料不足など、年々、これまでになく厳しい局面に立たされていきます。

 秋田県には国の指定をうけた伝統的工芸品が4つあります。大館曲げわっぱ、樺細工、川連漆器、秋田杉桶樽。少なくともひとつは、みなさんのご自宅にあるのではないでしょうか。これらはいずれも暮らしに密着した生活の道具であり、また森林資源から作られているという共通点があります。この事実は、秋田という土地そのものの特徴、歩んできた歴史や文化とも深く関係しています。

 本展覧会では、市民と伝統的工芸品、暮らしと伝統的工芸品との関係を探り、紐解くとともに、かつて日常にあった秋田の伝統的工芸品を、あらためて解説し、理解を深めてもらうことで、再びみなさんの暮らしの中に、ひとつでも多く帰したいと思っています。

 地球温暖化にともなうSDGsの流れ、リノベーションやアップサイクルなどの世界的な潮流は、秋田にも確実にやってきます。前述の通り、秋田の伝統的工芸品は、意図せず、その流れに合致するものばかりです。だからこそ、いま、未来に向けて地元の伝統的工芸品を見直すきっかけをつくりたいと願っています。

 「暮らし」「記憶」「経年変化」などの観点から、あらためて秋田の伝統的工芸品について、原材料や製造工程の物語とともに紹介し、未来の使い手との幸せな関係の発見を目指したいと思っています。

 そこで、秋田の4つの伝統的工芸品にまつわるエピソードをみなさんからお聞かせいただきたいと思っています。

「祖父母の代から受け継がれ大切に使い続けているもの」
「何かの記念に購入した、またはいただいて、以来、大切に使い続けているもの」
「わたしがこれを大切にしている理由」
「わたしがこれを好きな理由」

など、ご自身(またはご家族親戚)がお持ちの工芸品と、それにまつわるエピソードをお聞かせください。

 最後に、ひとつお伝えさせてください。伝統的工芸品は高い、工業製品は安い、一概にそうとは言えないと思います。どちらが良い悪いという話でもありません。あえて言うならば、モノがつくられていく過程や、職人をはじめとする関わる人々、そして思い、また環境への負荷や安全性など、これからの未来を見据えたものかどうか、ものづくりかどうか、が問われる時代になってきていると感じます。

 モノを手に入れることが幸せという時代は終わった。そう言われるようになって随分と時間が経過しました。わたしもそう思います。ただ、モノがあることで生まれた幸せ、思い出などは決して少なくないことも、疑いようのない事実だと思います。

 大切に、ときに直しながら何世代にも渡って長く使い続けられる工芸品。自然素材が生み出す経年変化の味わいと美しさについて、みなさんと語り合えたら嬉しく思います。

工芸分野キュレーター 合同会社casane tsumugu 田宮 慎

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以下のフォームより、あなたの「秋田の伝統的工芸品にまつわるエピソード」をお聞かせください。

対象:どなたでも
募集期間:2021年9月20日(月)まで 
※会場での記入も受け付けます。