7月24日開催
【レポート】職人による実演「”つくる”と”なおす”」大館曲げわっぱ編
展覧会「200年をたがやす」工芸分野の関連企画として、職人による実演・ワークショップ「”つくる”と”なおす”」をシリーズで開催中です。
7月24日(土)には「大館曲げわっぱ編」として、柴田慶信商店の代表取締役社長・柴田昌正さんによる曲げわっぱの実演とワークショップが開催されました。
蒸籠を山桜の皮をつかって綴じる方法を実演しながら、来館者から次々投げかけられる質問に応えていく柴田さん。
―いい曲げわっぱの見極め方は?
職人が心を込めてつくったものが伝わるもの。そして、目の細かい、いい材料を使っているもの。会社の朝礼では、「弱い気持ちでつくると次の工程に迷惑がかかる。100個作ろうと思うと、どうしても弱い気持ちが出てしまうが、自分たちとっては100個でも、お客さんにとっては1個なんだ」といつも伝えている。
平成25年から天然の秋田杉の伐採は禁止されていて、現在は樹齢150年以下の造林木のみ伐採が可能な秋田。人工的に造林した樹木は成長が早く、天然のものに比べると目が粗くなってしまうそう。柴田慶信商店は、天然杉の伐採が可能な青森、岩手などの北東北から材を仕入れているとのこと。
―綴じ方には決まりがあるんですか?
5~6種類のパターンがある。今回実演したのは、「子持ち縫い」というもので子孫繁栄を願ったもの。その他に、厄除けを願う「うろこ綴じ」などがある。
―作り手として、こうやって曲げわっぱを見てほしい、見せてほしいといったこだわりは?
今はモノを売るときに、そのモノの背景やストーリーを大切にすることが流行り。何歳の職人が、何年ものの素材をつかって、何ヵ月かけてつくったとか、そればかり聞かせられると重たすぎるように感じる。
そうではなくて、第一印象でまず「いいな」と思ってもらうこと。選んでもらえるものにならないと、自然と淘汰されてしまって残らない。デザイナーを入れて目新しいものをつくった時期もあったけれど、日常にある当たり前の道具であることが大切だと今は感じている。
約2時間にわたり、曲げわっぱの歴史や技法、職人の心意気、それを取り巻く環境の変化等、色々なお話をしてくださいました。
午後からはワークショップを開催。制作するのは、人気商品の白木丸弁当箱です。
用意された材料を使って、お湯につけた木を曲げる、山桜の皮で蓋の継ぎ目を綴じる、箱の底をつくってカンナがけをするなど、組み立ての工程をひと通り体験。実際に制作してみることで、曲げわっぱが木の性質を巧みに利用したつくりになっていることや、加工に細かい工夫がなされていることを知ることができました。
実演とワークショップ(大館曲げわっぱ編)は9月25日(土)にも開催します。
その他にも、川連漆器、杉桶樽、樺細工の実演も開催予定。
詳細はウェブサイトをご確認ください。
https://arts-akita.net/200years/presentation/craft210724/
講師
柴田昌正(柴田慶信商店 代表取締役社長)
1973年秋田県大館市生まれ。大学卒業後、2年間の会社勤めを経て秋田へ戻り、24歳で父・慶信氏に弟子入り、曲げ物の道に入る。2010年には柴田慶信商店の代表取締役に就任。全国伝統的工芸品公募展 日本伝統工芸士会長賞、日本クラフト展入選などを受賞。2019年には、製品販売、製作体験のほか、国内外から収集した曲げ物の展示も併設する「わっぱビルヂング」を大館駅前にオープン。2020年大館曲げわっぱ協同組合理事長に就任。