展覧会「200年をたがやす」|CULTIVATING SUCCESSIVE WISDOMS

【レポート】職人による実演・ワークショップ「”つくる”と”なおす”」秋田杉桶樽 編


展覧会「200年をたがやす」工芸分野の関連企画として、職人による実演・ワークショップ「”つくる”と”なおす”」をシリーズで開催中です。

8月7日(土)には、杉桶樽の実演を開催。

「工芸品」というもののイメージを覆すような、職人の佐々木勝美さん(能代製樽所)による全身をつかった迫力の実演に、立ち会った全員が息をのみました。


樽づくりの実演は、緩急をつけながらリズミカルに進みます。全身を使ってつくる姿は、まるでコンテンポラリーダンスのパフォーマンスを見ているかのようでした。

静かに材料を手に取ってくみ上げ始めたかと思ったら、竹をつかって締め上げる作業に入ると、両手、両足、まさに全身を使って打ち付け、締め上げ、調整を繰り返す。打ち付ける音が太鼓のように空間に木霊します。

桶の上から下にかけて、合計6箇所を太さの異なる竹を編んで締めあげていく。

最後の2本は、竹を手品のようにあっという間のスピードで鮮やかに円形に編み上げ、輪の大きさを調整しながら、締め方の塩梅を確認しながら淀みなく一気に進んでいきました。

出来上がったときには、思わず会場から拍手が。

佐々木さんは職人になって12年。自分はまだまだだとおっしゃいます。
能代製樽所にはキャリアが30年になる方もいらっしゃり、それはもう「全然違う」とのこと。失敗を幾度となく繰り返して、少しずつ職人としての《感覚》を獲得していくそう。
 
樽を竹で締めていく作業の中で、強弱をつけながら細かな調整を繰り返すすさまがとても印象的で、こんな質問をしてみました。
 
―しっかり締まっているかどうかは、目で見たり、音を聴いたりして確かめているんですか?

見たり、音を聞いたりというのも勿論そう。しかし、最後は感覚。
感覚というのは、なんとも言葉では説明できないけれども、経験を積み重ねていく中で習得していくもの。3年では足りない。5年やって徐々に感覚をつかんでいって、7年や8年やってみて、はじめて自信をもつことができるようになる。
 

秋田杉桶樽の実演は残念ながらこの日限り。
展覧会「200年をたがやす」の会場内では、杉桶樽の材料や道具や制作の過程を見ていただくことができます。ぜひ会場に足を運んでみてください。
 
講師
 
能代製樽株式会社
[実演]佐々木勝美
[解説]畠健男(取締役専務)
全国の酒蔵へ祝い樽を納める東日本では数少ない製造所。また、手作業で麹をつくる際、酒蔵や味噌醬油醸造元、麹屋で用いられる麹蓋(製麹用の杉容器)の製造も行うはど、醸造・発酵との結びつきが強い。