展覧会「200年をたがやす」|CULTIVATING SUCCESSIVE WISDOMS

【レポート】職人による実演・ワークショップ「”つくる”と”なおす”」川連漆器編

展覧会「200年をたがやす」工芸分野の関連企画として、職人による実演・ワークショップ「”つくる”と”なおす”」をシリーズで開催中です。

7月18日(日)と25日(日)には「川連漆器編」として、秋田川連塗 寿次郎の佐藤史幸さんによる川連漆器の実演とワークショップが開催されました。

ワークショップでは、拭き漆の技法を用いて箸と豆皿を7月18日(日)、25日(日)、31日(土)の3日間をかけて仕上げていきます。

飾って見て楽しむだけではなく、使われてこその工芸品と仰る佐藤さん。

実演では、塗りの工程の途中のものや完成品を実際に手にとって、その質感や手触りも味わっていただけます。実演会場では、漆器をつくる工程や使い方等について、佐藤さんに直接お話を伺うことができました。

―漆は完成までに何回くらい塗り重ねるんですか?

漆は塗り重ねてはいないんですよ。塗って1週間ほど乾かして、砥石で表面を荒らして、また塗るという工程を30~50くらい繰り返していく。砥石で荒らすのは、漆の密着性を高めるため。完成まで3~5ヵ月ほどかかる。

砥石を用いて漆を塗って乾かした表面を荒らす
さまざまな砥石

―割れたり欠けたりした器を補修する「金継ぎ」という技術も漆をつかっているんですよね?

「金継ぎ」は、漆の接着力を利用した技術。まず、小麦粉と漆を混ぜた「麦漆」をつかって接着し、その後砥の粉と漆を混ぜたもので隙間を埋めていく。さらに表面を漆を塗って整えて金の粉をはたく。金を使うのは装飾のため。金ではなく銀や、赤い漆など器にあわせて色も変えることができる。

―完成まで一人の職人さんが全てやっていらっしゃるんですか?

昔は、下地や中塗りや外注しているところが多かった。特に、自分が子供の頃には、下地の作業はお母さん方が内職としてやっていた。スーパーのパート等、職業の選択肢が増えたことによって、手が汚れる漆の内職から離れる人が増えていった。

実演とワークショップは、7月31日(土)にも開催します。

詳細は、リンクをご確認ください。
https://arts-akita.net/200years/presentation/210718/



講師
佐藤史幸(秋田 川連塗 寿次郎/伝統工芸士)
石川県立輪島漆芸技術研修所を卒業後、川連に戻り家業「寿次郎」で製作を行う。父の指導を受けながら、日本伝統工芸新作展(東日本支部展)、秋田県美術展覧会・河北工芸展等の公募展に出品。2012年には(財)伝統的工芸品産業振興協会が行う伝統工芸士認定試験に合格。「不易流行」を掲げる寿次郎のものづくりを受け継いでいる。