夜学 第2回 「食と自然」をつなぐ


「食と自然」をつなぐ
平成29年12月6日(水)18時30分~20時30分
エリアなかいち にぎわい交流館AU 4階研修室1・2

藤本 智士 / 編集者

1974年兵庫県生まれ。編集者。有限会社りす(Re:S)代表。編集執筆を担当した『ニッポンの嵐』など手がけた書籍多数。 著書に『ほんとうのニッポンに出会う旅』(リトルモア)、編著として池田修三作品集『センチメンタルの青い旗』(ナナロク社)、イラストレーターの福田利之氏との共著『BabyBook』(コクヨS&T)などのほか、最近では、編集長を務めた秋田県発行のフリーマガジン『のんびり』を書籍化した『風と土の秋田 二十年後の日本を生きる豊かさのヒント』(リトルモア)などがある。

菊地 晃生 / ファームガーデンたそがれ園主

1979年旧・飯田川町生まれ。ランドスケープデザインの仕事を経て現在に至る。慣行栽培のたんぼと家庭菜園から農に入るも圧倒的な化学肥料、農薬使用に衝撃を受け、1年で慣行栽培を離脱。2作目からは農薬・化学肥料を使わない栽培を目指して、自然栽培の技術を学びつつ自らの農地で実践をはじめ自主販売を始める。現在、水稲のほか大豆、ブルーベリー、枝豆、トマトなど約150品種を栽培。たそがれ野育園として、こどもから大人まで誰でも農的暮らしを気軽に体験できる学び場を主催。


高橋 基 / 有限会社たかえん 代表取締役

1968年、旧・十文字町生まれ。大学卒業後、秋田に帰郷し家業に就く。2008年1月、外食事業として惣菜店「デリカテッセン&カフェテリア紅玉」を開店。地産地消をコンセプトに地域の21軒の農家と取引し、地元のお客様に提供している。惣菜の製造販売、ランチやスィーツの提供、お弁当やオードブルの宅配などを事業の軸として間もなく10年になる。新たな事業として、地域の7軒の果樹農家とともに「クッキングアップルの郷」という連携体を組織。現在は県外のシェフ、パティシエなどに調理専用りんごを販売している。


第2回夜楽も、秋田市企画調整課齋藤課長より、取り組み主旨の説明から始まりました。

コーディネーター 石倉敏明氏(秋田公立美術大学准教授)

石倉:「夜楽」の第2回目ということで、「『食と自然』をつなぐ」というテーマにさせてもらいました。なぜ、この「芸術祭」というテーマで始まったシリーズが、「食べもの」とか「自然」というテーマになるのかというと、僕が秋田に移住してきた時に初めて実感したことの一つが「食べものがおいしい」ということと「自然が豊かである」ということだったからです。


編集者 藤本智士氏

藤本:僕の会社名は、アール・イー・コロン・エス(「Re:S」)、「りす」と読ませるんですが、その下に“Re:Standard”と書いています。スタンダード、つまり標準、普通のことを提案するという意味です。
「地方から発信していく」「ローカルから編集力を持って何かビジョンを実現していく」「世の中を変えていく」ということに興味があり、それを「編集」ということの中でやっています。

今年は秋田市民市場をメディアにした「なんもダイニング」や、にかほ市の北限のイチジクを使った「いちじくいち」というイベントをやりました。そういう食との関わりも含めて、僕はそこに何となく編集という掛け算をしながら秋田を盛り上げていければいいなあと思っています。


ファームガーデンたそがれ園主 菊池晃生氏

菊池:県外に住んでいた時、よく思い出していたのは、郷里の日本海に沈むたそがれ時の情景、夕日に舞うとんぼの姿などの子どもの頃の原風景でした。それで農園を「たそがれ」という名前にしました。
今日のテーマ「食と自然」に沿って、農業とは何ぞやということを考えてみると、食べものをつくることだけじゃなく、生きる行為そのもの……、つくる、食べる、耕す、再生する、育てる、導く、楽しむ、暮らす、考える、生み出す、編む、染める、風景となる、学ぶ、共存する、学ぶ、愛する、などいろんな行為が含まれるということを再認識しているところです。
自然が相手なので時には危険と隣り合わせとなることもありますが、その自然の強さ、優しさみたいなことを感じて生きるということも、農業をするうえでの喜びではないかと思っています。


有限会社たかえん代表取締役 高橋基氏

高橋:横手市十文字で「デリカテッセン&紅玉」というお惣菜の店をやっています。店の名前の「紅玉」はりんごの品種名ですが、味が時代遅れといわれ、今はあまりつくられていません。それでも地域のりんご農家の畑には必ず1本は残っていて、時代性を超越したそんなお店になりたいという思いで付けました。それから、私の妻は「紅(くれない)」、祖母は「タマ」という名前です。女性が世代を超えて受け渡してきた大切なものを守り伝えていけたらと思ったのも理由のひとつです。
「地域のことを考える」ということは、自分のことだけではなく、お互いが人の役に立てるものは何かを考えること。
自分の暮らすまちの風景や歴史・文化などを知り、愛すること。10年後の姿を考えること。それが暮らしへの愛着となり、住んでいる人への尊敬となる。そして、地域を超えて人と繋がり、他の地域の人や文化も大切に思える。

後半はフリートーク。
秋田の食、市民市場、流通、原風景などのついてお話を交わしました。

藤本:せっかく秋田駅の近くに市民市場があって食材豊かだから、ビジネスホテルではなく、本当はここでごはん食べられたらいいのになあというシンプルな欲望から、「なんもダイニング」の発想が生まれたんです。
秋田市民にとっての市場だったところが、いつの間にかプロユースだとか、飲食店をしている人が買い付けに来るみたいな市場になって、少子高齢化、人口減少の象徴みたいになっていました。そこに秋田県そのものを見た気がしたので、市民市場がチェンジしていくことが、逆に象徴的に秋田県が変わっていくことにつながっていかないかなっていう思いを潜めつつ、何とかそこに若い人たちが来る仕組がつくれないかと考えたわけです。
市民市場の話は、起点としては単なる僕の欲望から始まり、少し踏み込んで、秋田県全体の問題みたいなとこまで行っているんですけど、これがさらに、ある種の教育というか、秋田市民の皆さんにとっての「気付きの場」であり、「学びの場」であるっていう側面がもっと増えていけば、「なんもダイニング」ももっとよくなるんじゃないかと妄想しています。

菊池:「秋田のランドスケープって何だ」と考えた時に「田んぼ」が浮かび、新しい暮らし方の一つとして、農というスタイルをとり入れ、みんなでその風景を維持していくことができないかなと思っています。そういったことが自分たちの食を守ることにつながるんじゃないでしょうか。

高橋:人は一人ひとり違っていて、自分が変化したいと思わなければ変化はせず、かつその変化したいと思うきっかけは、他人との関わりの中でそれを感じるんじゃないかと。 人を育てるのは誰かに教えられて、教育によってできるものではない。教えて育てるのは、かなり難しいことで、楽観的には考えられないと思えます。ですから、自分が変わりたいと思えるきっかけをつくってあげる。そこにしか人が育つ方法はないんじゃないかと思います。

石倉:目の前の里山が、実は自分の体の裏返した外なんじゃないかという変なアイデアにとりつかれて、それを外臓という概念で表現してみたのです。つまり、内臓の反対ですね。内臓と外臓はつながっているというのを書きたくて、書きたくて、ここ数年間ズーッと書けないでいますが。
秋田公立美術大学の卒業生は、東京に出てデザインスキルを磨いて地域に戻るというのが当たり前でしたが、「のんびり」を超えるカッコいいものはないと考え、「のんびり」に就職する学生があらわれました。つまり東京に出て戻ってくるのは時間がもったいないという考えです。
もう少し解像度を上げて、秋田の地域を見ていくために、秋田市民市場や秋田市は、秋田のマイクロローカルをつなぐ媒体にならなければいけないのかな、ということが見えてきたように思います。



終了後の懇親会では、ファームガーデンたそがれさんの商品が並べられ、熱心に話を聞く参加者がたくさん見られました。

参加者は約66名でした。

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